片頭痛

片頭痛とはなにか

片頭痛は緊張性頭痛と呼ばれる一般的な締め付けられるような頭痛と違って、ドクンドクン・ズキンズキンと脈打つような感じ(拍動性)の頭痛が繰り返し起こるもので、10-50歳の女性に多くみられますが男性にも起こります。典型的な片頭痛は閃輝暗点といって視界の端から眼にギザギザとした光が見え始めてきてそれが収まると頭痛が始まるといったものですが、閃輝暗点を伴う片頭痛は半数程度と言われています。片頭痛の最も重要な診断基準は「その頭痛が日常生活が送れないほど辛い」というもので、ご自身で片頭痛だと気づいていない人も多いと言われています。また、片頭痛という名前と裏腹に一部の患者さんでは両側に同時に片頭痛が起こることもあります。

階段の上り下りなど日常的な運動だけでも頭痛は増強し、吐き気や嘔吐、光過敏・音過敏・臭い過敏など静かで暗い場所で横になって症状が治まるまで数時間、人によってはそれが数日持続することがあります。遺伝性があることも知られており、片頭痛持ちの40%以上が、血縁者に片頭痛の人がいるといわれています。片頭痛の原因はまだ完全には解明されていませんが、何らかの原因で脳の血管が収縮した後に反射的に血管が炎症物質とともに血管拡張を起こすことでひどい頭痛が起こると考えられています。

片頭痛には専用の治療薬があります

自分の片頭痛を片頭痛と気づいていない人は通常の頭痛薬でなんとか切り抜けようとしている方が多いですが、片頭痛にはその他にもトリプタン製剤という片頭痛専用の頭痛薬があり、それらを使用することでなんとか日常生活を送れる程度まで頭痛をコントロールすることが可能となっています。主に拡張した血管を再度収縮させることで効果を発揮しているものと考えられています。代表的なものとしてスマトリプタン(製品名:イミグラン)などがあり、内服薬、点鼻薬、自己注射薬としての処方が可能です。

イミグラン錠 (一般名:スマトリプタン)
イミグラン点鼻薬

イミグラン注射薬

それぞれ主成分は同じスマトリプタンですが少しずつ効果が変わってきます。一般的に内服薬は効き始めるのに1時間程度時間がかかりますが最も効果が長く続くとされています。一方、自己注射は数分で効果を発揮し場合によっては片頭痛が完全に消失することもありますが人によってはしばらくすると片頭痛が再燃することがあります。点鼻剤は効き始める時間と効果は内服薬と注射薬の中間程度ですが、吐き気が強すぎて内服ができない人には便利な形態です。
このように薬の形(剤形)以外にもトリプタン製剤には様々な種類があり、一種類の効果がいまいちだったとしても医師と相談してその人に一番あったトリプタン製剤を見つけるのが日常生活の質を上げるために重要になってきます。

その他主な片頭痛治療薬

  • ゾーミッグ錠 (一般名:ゾルミトリプタン)
    • 比較的効果は高いが、中枢移行性がやや高く、ふわふわとした浮遊感などの副作用がでやすい。水がなくても飲めるオレンジ味の RM 錠がある。
  • レルパックス錠 (一般名:エレトリプタン)
    • 海外承認量の半量で内服開始するため、気づいたら症状が消失しているような副作用の少ない効き方をする。効果不十分の場合2錠で内服可。
  • マクサルト錠 (一般名:リザトリプタン)
    • 経口薬の中では血中濃度の上昇が最も早く、効果が出現するのが早いが消失するのも早く人によっては発作が再燃することがある。水がなくても飲めるミント味の RPD 錠がある。
  • アマージ錠 (一般名:ナラトリプタン)
    • 血中濃度の上昇が遅く、効果が出るまで時間がかかるが一度効果が出ると長期間効果を発揮する。中枢移行性が少なくふわふわとした感じなどの浮遊感などの副作用は少ない。

当院でも片頭痛治療を得意にしている医師がおりますのでお気軽にご相談ください。

なお、片頭痛に対してはトリプタン製剤以外にも通常の頭痛薬(ロキソプロフェンやアセトアミノフェン)や吐き気止め(メトクロプラミド)の併用が症状の改善に有効とされております。当院では基本的トリプタン製剤とこれらの薬の併用をおすすめしています。

片頭痛の予防

片頭痛にはいくつかのリスク因子があり、その中で最も有名なものがチラミンを含むチョコレートや赤ワインです。これらは少なくとも群発期(片頭痛がしばしば起こる時期)には避けたほうが無難でしょう。その他にも片頭痛の群発期に片頭痛を予防してくれる薬剤が2種類知られています。それがロメリジン(商品名:ミグシス)と漢方薬である呉茱萸湯です。

ミグシス錠(一般名:ロメリジン)
呉茱萸湯

ロメリジンは Ca ブロッカーと呼ばれ、一般的には血管に作用することで血圧を下げる効果を持ちますが、この薬剤は脳の血管に選択的に作用することで発作頻度を抑えてくれると言われています。ただし、ロメリジン単体の副作用として通常の頭の締め付けられるような頭痛が起こる方が多いのと即効性に乏しいため、当院では漢方薬が内服出来る方には呉茱萸湯の内服をおすすめしています。両方とも群発期に定期的に内服することで発作頻度、発作時の痛みを半分程度にするのではないかと言われていますが、呉茱萸湯に関しては痛みが出た際の痛み止めとしても使用できるため当院では積極的に利用しています。

その他、2021年1月にイーライリリーより新薬エムガルディ(一般名:ガルカネズマブ)が片頭痛の予防を目的に保険収載されました。これは上記の予防薬でも十分片頭痛発作が予防できない患者さんに対して、片頭痛の原因となる血管拡張作用を持つカルシトニン遺伝子関連ペプチド CGRP (calcitonin-gene related peptide) 受容体を抑える抗体薬で、月1回の注射投与で発作頻度を使用6ヶ月で半数以上の患者さんで半減、10%の患者さんでは完全消失させています。比較的高額な薬剤ですが、月に一度の治療で日常的な片頭痛で生活がままならない患者さんには大きな福音になると思われます。

エムガルディ(一般名:ガルカネズマブ)

片頭痛は完治しますか?

現在片頭痛を完治させる治療法はありません。しかし、トリプタン製剤を始めとした各種鎮痛薬の組み合わせで日常生活を問題なく送れるレベルまで改善することは可能です。ロメリジン、呉茱萸湯以外に新薬エムガルディがでたことで更に治療の選択肢は広まっており、今まで以上に日常生活の質を向上させることが可能になることが期待されます。
また、年齢を重ねていくにつれて症状が軽快することが知られており、自然寛解する方も多いと報告されています。

まとめ

  • 片頭痛はドクンドクンと拍動性の頭痛で「日常生活が送れないほど辛い」ものである。必ずしも片側性でなく、場合により両側であってもよく、光過敏・音過敏・臭い過敏などが出現する。
  • 通常の鎮痛薬に加え、トリプタン製剤の利用が片頭痛には著効する。
  • ロメリジン呉茱萸湯などの予防薬に加え、新薬のエムガルディによる予防効果が期待される。
  • 適切な処方で日常生活が支障なく送れるレベルまで抑えることは十分可能。

参考文献