内容監修
安斉 基之
MOTOYUKI ANZAI
安斉 基之
MOTOYUKI ANZAI
医師 / 泌尿器科医専門医 / ボトックスビスタ認定医 / オンライン診療研修終了 / 緩和ケア研修終了
2015年 東邦大学医学部卒業 クリニックTENでは美容皮膚科、泌尿器科、内科、皮膚科など全般を担当。
ドキシペップ(DoxyPEP)とは
ドキシペップ(DoxyPEP)とは、「Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis」の頭文字をとった言葉です。日本語にすると「ドキシサイクリンによる性行為後の曝露後予防内服」となります。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「コンドームなしの性行為など、感染のリスクがあった後で薬を飲むことで、性感染症にかかるのを防ぐ」という、いわば細菌性性感染症の「緊急予防薬」です。
ドキシペップの有効成分は「ドキシサイクリン」という抗生物質です。
「抗生物質」と聞くと少し身構えてしまうかもしれませんが、ドキシサイクリンはニキビ治療や呼吸器感染症、皮膚感染症など、様々な病気の治療に長年使用されてきた実績のあるお薬です。
このドキシサイクリンが、体内に入り込もうとする細菌のタンパク質合成を邪魔することで増殖を抑え、感染が成立するのを防いでくれます。
対象となる性感染症
ドキシペップが予防効果を発揮するのは、細菌が原因となる以下の3つの性感染症です。
- 梅毒
- 淋菌感染症(淋病)
- クラミジア感染症
注意点
ドキシペップは細菌には効果がありますが、ウイルスが原因となる性感染症(HIV、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、B型肝炎など)を防ぐことはできません。
効果と服用を推奨する方
ドキシペップの効果は、国外で行われた多くの臨床試験により、科学的に証明済みです。
例えば、アメリカで行われた大規模な研究では、MSM(男性と性交渉を行う男性)やトランスジェンダー女性がドキシペップを服用したところ、プラセボ(偽薬)を服用したグループと比較して、性感染症の感染率が約3分の1にまで減少したと報告されています。
具体的には、
- 梅毒:87%減少
- 淋菌感染症:55%減少
- クラミジア感染症:88%減少
という非常に高い予防効果が示されました。
参照:細菌性性感染症を予防するためのドキシサイクリン曝露後予防内服(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37018493/)
どのような人(服用対象者)に推奨されるか?
その高い効果から、ドキシペップは特に以下のような方に推奨されています。
- HIV予防薬のPrEP(プレップ)を服用している方
- 複数のセックスパートナーがいる方
- コンドームを使用しない性行為の機会がある方
- 風俗関係やアダルトビデオ出演等のCSW(コマーシャルセックスワーカー)の方
- 過去に性感染症の診断を受けたことがある方
もしご自身が当てはまるかもしれないと感じたら、一度当院の性感染症内科に相談してみることをお勧めします。
ドキシペップの副作用と注意点
主な副作用
- 消化器症状:吐き気、下痢、腹痛、食欲不振など
- 光線過敏症:日光(紫外線)に過敏になり、肌に赤み、発疹、水ぶくれなどができやすくなります。服用期間中は、日焼け止めの使用や長袖を着用するなどの紫外線対策を心がけましょう。
- その他:めまい、頭痛など
これらの副作用の多くは一時的なものですが、症状が重い場合や長く続く場合は、処方を受けた医師に相談してください。
長期服用による懸念「薬剤耐性菌」とは?
ドキシペップは抗生物質のため、頻繁に使用すると、その抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」を生み出してしまう可能性が指摘されています。特に淋菌は耐性化が進みやすいことが知られています。
薬剤耐性菌の拡大を防ぐためにも、医師の指示通りに正しく服用し、定期的に性感染症の検査を受けることが非常に重要です。
ドキシペップを服用できない人
以下に該当する方は、ドキシペップを服用することができません。
- ドキシサイクリン(テトラサイクリン系抗生物質)にアレルギーがある方
- 妊娠中または妊娠の可能性がある方、授乳中の方
- 8歳未満のお子様(歯の着色や骨の発育に影響を与える可能性があるため)
ドキシペップは高い予防効果を持つ予防薬ですが、決して万能薬ではありません。
- 予防効果は100%ではない
- HIVやヘルペスなどのウイルス性性感染症は防げない
- 望まない妊娠を防ぐことはできない
性感染症と望まない妊娠の両方を防ぐ最も効果的で基本的な方法は、コンドームを正しく使用することです。ドキシペップはあくまでコンドームを補完する「追加の選択肢」と考え、必ず併用するようにしてください。
費用
当院で処方させていただくドキシペップ処方薬「ビブラマイシン」は性感染症の予防目的では日本の健康保険の適用にはなっておらず、国の承認も受けていません。
そのため自由診療扱いとなります。
標準的な価格について
4,500円〜10,000円
診察料
| 自費初診料 | 2,750円 |
| 再診料 | 1,100円 (2回目以降) |
薬剤費用
| 1回分(2錠) | 1,750円 |
| 3回分(6錠) | 4,750円 |
| 5回分(10錠) | 6,750円 |
受診費用例
| 初診にて1回分(2錠)のお渡し:初診料+錠剤費用 | 合計4,500円 |
| 再診にて5回分(10錠)のお渡し:再診料+錠剤費用 | 合計7,850円 |
CSW(コマーシャルセックスワーカー)の方について
風俗関係やアダルトビデオ出演等のCSW(コマーシャルセックスワーカー)の方は、診察時や事前問診時の自己申告をお願い致します。
(継続した再診をご希望の場合は、安価に通院可能なセット販売などの別料金にてご案内させていただきます。)