内容監修
石黒 剛
GO ISHIGURO
石黒 剛
GO ISHIGURO
医師
大学在学時から現在の病院中心の医療システムに疑問を持ち、 日常生活に医療を提供するシステム作りをミッションに掲げる。 2019年、訪問診療専門の「いしぐろ在宅診療所」を兄と二人で開業。 クリニックTENでは、働く世代に焦点を当て、生活に溶け込む医療機関の実現を目指す。
腰椎分離すべり症とはなにか
腰椎(腰の骨)は、椎体という部分と、椎体から背中側に飛び出している椎弓という部分に大きく分けられます。この椎弓にはいくつか突起があります。そのうちの上関節突起と下関節突起という突起の間で骨折・分離が起こったものを腰椎分離症といいます。さらに、この分離した上に、椎体がお腹側にずれたものが腰椎分離すべり症になります。
腰椎分離すべり症の症状とその特徴
腰痛が主な症状です。腰の他に、おしりから太ももの裏あたりに痛みが走ることもあります。太ももから足先までにかけて、痛みがあったり感覚が鈍くなったりすることもあります。また、少し歩くと脚に痛みや痺れが出て歩けなくなり、少し休むと良くなってまた歩けるようになる、といったことを繰り返す(間欠跛行)場合があります。
この病気で重要なのは、似た症状を引き起こす「椎間板ヘルニア」と区別して、適切な治療を行うことです。腰椎分離すべり症は、身体を後ろに反らした(後屈)時に痛みが強くなりますが、椎間板ヘルニアでは、身体を前に曲げる(前屈)時に痛みが強くなるという違いがあります。
腰椎分離すべり症の治療
治療は、骨折した直後の場合(急性期)と、骨折から時間が経ってしまった場合(慢性期)とで変わります。
骨折した直後の場合、骨が元通りくっつくことが期待できます。そのため、コルセットや体幹のギプスを付けて骨を固定したり、運動を制限したりといった保存的な治療が行われます。
一方、骨折から時間が経ってしまった場合、骨が元通りくっつくことは期待できません。そのため、症状をコントロールすることが治療の目標になります。痛み止めの服用や、痛みの原因となっている圧迫された神経に麻酔して痛みを和らげる「神経ブロック」という治療もあります。また、ストレッチも有効とされています。手術を行う場合もあります。
腰椎分離すべり症でやってはいけないこと
腰椎分離すべり症は、腰を後ろに反らせる動作や腰を捻る動作で痛みが強くなってしまいます。これらの動作は控えましょう。
また、激しい運動も禁物です。特に急性期では、運動を制限して骨に負担をかけないことがとても重要です。スポーツに盛んに取り組んでいる患者さんが多く、試合などの理由で運動制限をしたくないという患者さんも多いですが、無理に運動すると骨が元通りにくっつく可能性が減ってしまいます。骨がくっつかなければ、症状が長引くことになります。ぐっと我慢して、運動制限の指示が出た場合は、医師の指示にしたがうようにしましょう。
まとめ
- 腰椎の椎弓の一部に骨折が起き、椎体がお腹側にずれたものが腰椎分離すべり症です。
- 原因は、成長期における過剰なスポーツ活動が多いです。
- 身体を後ろに反らすと痛みが強くなる点が椎間板ヘルニアとの違い
- まずは、コルセットなどによる固定と運動制限。ストレッチは落ち着いてから。