NIPTの精度は年齢によって変わる?他の検査との違いも解説

NIPTを受けようか迷っている方の中には、「検査の精度ってどれくらいなんだろう?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。いざ判定が出たときに、どれくらいの確率で的中するのかは気になりますよね。

本記事では、NIPTの精度について詳しく解説しています。

  • NIPTはどれくらいの精度なのか知りたい
  • 陽性の判定が出たときにどう受け止めればよいのか不安

上記に当てはまる方は、ぜひ最後までご覧ください。

NIPTの精度を表す4つの指標

NIPTの検査精度を表す指標は4つあります。

  • 感度
  • 特異度
  • 的中率
  • 偽陽性と偽陰性

各指標の意味について理解を深めていきましょう。

感度

感度とは、「胎児が染色体異常をもつ場合に、NIPTの結果が陽性になる確率」を指します。NIPTの感度は染色体異常の種類により異なりますが、たとえば21トリソミー(ダウン症候群)の場合は99%です。21トリソミーの胎児をもつお母さん100人がNIPTを受けた場合、99人は結果が陽性になるということです。残りの1人は21トリソミーがあっても、検査結果は陰性となってしまいます。

感度の高い検査は、「結果が陰性で実際は染色体異常をもっている確率」が低いことを指します。NIPTで陰性判定が出た場合は、染色体異常の可能性が低いと判断してよいでしょう

特異度

特異度は、「胎児が染色体異常をもたない場合に、NIPTの結果が陰性になる確率」を指します。NIPTの特異度は、21トリソミーの場合で99%です。21トリソミーのない胎児を妊娠しているお母さん100人がNIPTを受けた場合、99人は陰性と出ます。残りの1人は、21トリソミーがなくても、結果は陽性と出てしまうのです。

特異度の高い検査は、「結果が陽性で実際は染色体異常をもっていない確率」が低いことを示します。NIPTで陽性判定が出た場合は、染色体異常の可能性が高いと判断できます。

的中率

的中率は、「結果が陽性(または陰性)の場合に、胎児が実際に染色体異常をもつ(陰性の場合は異常をもたない)確率」のことです。

NIPTの的中率は、妊婦さんの年齢によって異なると知られています。たとえば、35歳以上の妊婦さんで21トリソミー(ダウン症候群)を調べた際の陽性的中率は95.9%です。検査結果が陽性でも、約4%は染色体異常のない赤ちゃんが生まれてくる可能性があります。

偽陽性と偽陰性

偽陽性は「検査結果が陽性でも、実際は遺伝子異常のない赤ちゃんが生まれること」を指します。偽陰性は「検査結果が陰性でも、実際は遺伝子異常のある赤ちゃんが生まれること」です。

NIPTの結果が陽性の場合、基本的には羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を実施します。偽陽性の場合は、確定的検査を実施した際に陰性判定が出ることになります。

NIPTの結果が陰性の場合は、確定的検査をほとんど実施しません。出産後に遺伝子異常が見つかって初めて、検査結果が偽陰性であったことを知ることになります。

NIPTの精度は母親の年齢に依存する

NIPTの精度は、お母さんの年齢に影響を受けます。検査精度に関して最も気になるのは陽性的中率、つまり「結果が陽性の場合、実際に染色体異常の可能性がある確率はどれくらいなのか?」ということでしょう。陽性的中率は、以下に示す3つの指標を用いて算出します。

  • 感度
  • 特異度
  • 有病率

染色体異常による疾患は、お母さんの年齢が上がるにつれて有病率が上がります。染色体異常の中で有病率の高い21トリソミー(ダウン症候群)を例に挙げると、お母さんの年齢が20歳の場合、有病率は2,000人に1人程度です。一方お母さんの年齢が40歳の場合、有病率は100人に1人程度まで高まります。したがって、NIPTの陽性的中率もお母さんの年齢とともに上がっていくのです。

NIPTと他の非確定的検査との精度の違い

非確定的検査には、NIPT以外にも複数の検査方法があります。NIPTは非確定的検査の中でも精度が高い検査です。

例として感度について、他の非確定的検査との違いを表にまとめました。

検査施行時期21トリソミーの感度
中期母体血清マーカー(トリプルテスト、クアドラプルテストなど)15〜20週69%(トリプルテスト)

81%(クアドラプルテスト)

母体血を用いた胎児染色体検査(NIPT)10週以降99%
ソフトマーカーを用いた超音波検査11〜13週64〜70%
ソフトマーカーを用いた超音波検査18週50〜75%
初期血清マーカーとソフトマーカーの組み合わせ(妊娠初期)11〜13週82〜87%

参考:産婦人科診療ガイドラインー産科編2020

NIPTは、「母体血を用いた胎児染色体検査」に含まれます。感度は染色体異常の種類によっても異なるため、代表的な染色体異常として知られている21トリソミー(ダウン症候群)の結果を比較しました。

感度の高い検査で結果が陰性の場合、実際に胎児が染色体異常をもたない確率が高いことを示します。NIPTは他の非確定的検査と比較して、陰性判定の的中率が高いといえるでしょう。

NIPTの精度を踏まえて正しく結果を理解しよう

NIPTの結果は、陽性、陰性、再検査(保留)の3種類で示されます。NIPTの精度を踏まえ、それぞれの結果をどう解釈すればよいのか理解していきましょう。

陽性の場合

陽性の場合は、胎児に染色体異常の可能性があることを示します。NIPTは非確定的検査であるため、結果が陽性でも必ず胎児が染色体異常をもつとは言い切れません。陽性的中率は、染色体異常の種類や妊婦さんの年齢によっても異なります。

NIPTで陽性になった場合は、基本的に絨毛検査や羊水検査で確定診断します。確定診断で結果を明確にすることで、心の準備を整えてサポート体制を整備したり、子育ての準備をあらかじめ進めやすくなったりするのです。

陰性の場合

陰性の場合は、胎児に染色体異常がある可能性は低いことを示します。非確定的検査の特性上、陰性結果が確定診断とはなりません。ただしNIPTは感度の高い検査であるため、他の非確定的検査と比較して陰性的中率は高くなっています。

NIPTの結果が陰性の場合、確定的検査を受けることはほとんどありません。出産後に染色体異常が判明する可能性もあることは理解しておきましょう。

再検査(保留)の場合

再検査(保留)は、陽性または陰性いずれかの判定ができなかったことを示します。再検査になってしまう要因は以下の通りです。

  • 妊婦さんの血液中に含まれる胎児のDNA量が少ない
  • 服薬中の薬が原因で検査できない

胎児のDNA量が少ない場合は、妊娠週数が経過してから再度検査することで判定できることもあります。再検査になった場合の対応については、医師と話し合いながら進めていきましょう。

NIPTで調べられる染色体異常の種類

NIPTでは、3種類の染色体異常を調べられます。

  • 21トリソミー(ダウン症候群)
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群)
  • 13トリソミー(パトウ症候群)

トリソミーとは、通常2本で1組の染色体が3本になる異常のことです。染色体異常は他にもありますが、ほとんどの場合は生まれる前に亡くなってしまいます。そのため、NIPTでは3種類に絞って検査を実施します。それぞれの染色体異常について理解を深めていきましょう。

21トリソミー(ダウン症候群)

21トリソミーは「ダウン症候群」とも呼ばれ、22組ある常染色体のうち21番目の染色体が3本になる染色体異常です。ダウン症候群の赤ちゃんには、特徴的顔貌や低身長、発達遅延などが見られます。また、約50%の確率で心疾患を合併しています。

妊婦さんの年齢が上がるにつれて発症率が高くなる傾向で、出産時の年齢が20歳の場合は2,000人に1人程度、40歳の場合は100人に1人程度です。ダウン症候群の方は、平均寿命が40〜50代と確認されています。

18トリソミー(エドワーズ症候群)

18トリソミーは、18番目の常染色体が3本になる染色体異常のことです。18トリソミーの赤ちゃんは、顎が小さく後頭部が突出しているという特徴があります。非常に高い確率で先天性の心疾患を合併していて、約60%は生まれる前に亡くなってしまいます。出生後の平均寿命は、男児で1.6か月程度、女児で9.6か月程度です。

発症率は21トリソミーの次に高く、3,500〜8,500人に1人程度の確率です。発症率に男女差があるのも特徴で、男女比は1:3と女児に多く見られます。

13トリソミー(パトウ症候群)

13トリソミーは、13番目の常染色体が3本になる染色体異常です。発育不全や脳の病気、心臓病など体のさまざまな部位に異常が見られ、胎児の多くはお腹の中で亡くなってしまいます。出生後の平均寿命は3〜4か月程度です。発症率は3種類のトリソミーで最も低く、5,000〜12,000人に1人程度の確率です。

 

NIPTを受ける前に知っておいてほしい3つのこと

NIPTを受ける前に知っておいてほしいことを3つお伝えします。

  • 検査の目的
  • 検査の対象者
  • 検査にかかる費用

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

検査の目的

本来の目的は、胎児に染色体異常があることを事前に知ることで心の準備を整え、サポート体制を含めた子育ての準備を早めに進めることです。

しかし、染色体異常による疾患をもった子どもを育てることへの不安から、検査を受けた後に人工中絶を選択する方がいることも事実。染色体異常の可能性を事前に知る目的を理解した上で、検査を受けるかどうか決めることが大切です。

検査の目的を正しく理解しておきましょう。

検査の対象者

NIPTは、すべての妊婦さんに適応される検査ではありません。対象となる妊婦さんの条件は以下の通りです。

  1. 超音波検査や母体血清マーカー検査で、胎児に染色体異常の可能性があると判断された方
  2. 染色体異常のある赤ちゃんを妊娠したことがある方
  3. 高齢妊娠の方
  4. 両親のいずれかに「均衡型ロバートソン転座」という染色体異常があり、赤ちゃんが13トリソミーまたは21トリソミーとなる可能性がある方

参考:産婦人科診療ガイドラインー産科編2020

条件に当てはまる方は「ハイリスク妊婦」と呼ばれていて、染色体異常のある赤ちゃんを妊娠する可能性が通常よりも高い妊婦さんのことを指します。基本的にはハイリスク妊婦の条件に当てはまる方がNIPTの対象です。

検査にかかる費用

NIPTの費用相場は、10〜20万円程度が目安です。NIPTは保険適応外の検査なので、施設ごとに検査費用が異なります。施設によっては、結果が陽性の場合に必要な確定的検査にかかる費用も含まれていることもあります。NIPTを検討している方は、検査費用も含めて受けるかどうかを慎重に判断する必要がありますね。

まとめ

NIPTの精度は、「感度」「特異度」「的中率」「偽陽性と偽陰性」の4つの指標に基づいて評価されます。検査精度は、妊婦さんの年齢や染色体疾患の種類にも影響を受けます。すべての妊婦さんが受けられるわけではないことも、理解しておきましょう。精度を踏まえて結果を正しく理解することが大切です。

NIPTを検討している方は、検査精度だけでなく検査の目的もあらためて確認しておきましょう。検査の相場は10〜20万円と決して安い金額ではないので、医師とも話し合いながら慎重に決めることをおすすめします。

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