内容監修
石黒 剛
GO ISHIGURO
石黒 剛
GO ISHIGURO
医師
大学在学時から現在の病院中心の医療システムに疑問を持ち、 日常生活に医療を提供するシステム作りをミッションに掲げる。 2019年、訪問診療専門の「いしぐろ在宅診療所」を兄と二人で開業。 クリニックTENでは、働く世代に焦点を当て、生活に溶け込む医療機関の実現を目指す。
咳とはどのような症状か
人間が呼吸をする時には、鼻や口から吸い込んだ空気が肺まで届き、そこで酸素と二酸化炭素の交換が行われたのちに、再び同じところを逆向きに通って空気を外に吐き出します。この空気の通り道をまとめて気道と言います。咳とは、気道に入ってしまったホコリ・ばい菌、あるいは痰などの分泌物を身体の外に出すために起こる現象です。
咳は、肺や気管支などの呼吸に関わる臓器が原因で起こることが多いですが、心臓や食道などの病気が原因で起こる場合もあります。
咳の原因を考えるうえで、咳と一緒に痰が出るかどうかは重要な情報になります。医師の診察を受ける際には痰の有無も伝えるとよいでしょう。
咳がある場合に心がけること
咳があるときは、まずのどを乾燥させないように心がけましょう。具体的には、うがい、マスクの着用、入浴などがおすすめです。
マスクはのどにうるおいを与えるだけでなく、咳でウイルスなどが飛び散らないようにする効果もあります。同居する家族がいる場合は、そういった意味でもなるべく着用するようにしましょう。
入浴すると、湯気でのどがうるおい、少し楽になることがあります。ただし、咳だけではなく、熱がある、体力がないなど他の症状もある場合は、かえって体調を崩すこともあります。入浴してよいか心配な場合には、医師に相談してみてください。
また、痰がある咳の場合、水分不足になると痰の粘り気が強くなり、痰が切れにくくなります。そのため、いつもよりも水分補給を心がけましょう。ただし、あまりにも水分を取り過ぎてしまうと、咳込んだ時に飲んだものを一緒に吐いてしまうこともあるので注意が必要です。
また、運動などで活発に身体を動かすと咳が出やすくなってしまうので、咳があるときにはあまり動かずに安静にすることが大切です。
咳の原因として考えうる疾患
風邪・インフルエンザ
咳の原因として最も多いのは風邪です。季節が冬であればインフルエンザも多くなります。風邪やインフルエンザの場合は、特別咳に対する薬を飲まなくても、適切な処置を行えば問題ないことがほとんどです。ただし、咳が中々治らずに長く続く場合や、身体の痛みが酷い場合は他の病気が原因のこともあります。そういった場合は早めに病院を受診しましょう。
呼吸に関わる臓器の不調
風邪・インフルエンザに比べると頻度は低いですが、それでも比較的多いのが肺炎です。細菌が原因の肺炎の場合、抗生剤(抗生物質)が有効なので病院を受診しましょう。咳が長引く、熱があってなかなか下がらないなど、いつもの風邪とちょっと違うなと感じたら一度病院を受診すると良いでしょう。
気管支の病気である喘息で咳が出ることもあります。喘息の場合、咳が出てつらい時の治療だけでなく、症状が出ていない時にも薬を使って予防を行います。どんな治療を受けるかについては、まず医師に相談してみましょう。
その他の原因
呼吸に関わらない臓器が原因となる病気としては、逆流性食道炎や心不全などがあります。これらの疾患が原因で咳が出ている場合、咳の症状だけでは診断が難しい場合もあります。例えば、咳に伴う胸やけは逆流性食道炎を疑わせます。診断の手がかりとなるので、咳以外の症状があれば、問診に記入するなどしましょう。
咳を伴う、緊急度の高い疾患
咳の症状に加えて、声が変だったり、息をする時にヒューヒューなどの変な音がしたりする場合は、食べ物の一部など、気道に比較的大きな異物があることが考えられます。この場合、そのままにしておくと窒息してしまう可能性があり大変危険です。ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに病院を受診してください。
また、以下のような症状がある場合も、生命に関わる疾患の可能性があります。
- 呼吸がしにくい、突然呼吸がしにくくなった
- 息が苦しい
- 胸が痛い
このような状況であれば、救急車を呼ぶか、病院をすぐに受診することをおすすめします。
まとめ
- 咳は気道に侵入した異物や分泌物を排出するために起こります。
- 咳がある時には、マスクを着用する・うがい・入浴などでのどをうるおすことが重要である。痰もある場合は、水分補給を心がけると痰が切れやすくなります。
- 咳の原因としては風邪や、冬であればインフルエンザが多いです。
- 咳以外に、声が変・息をする時に変な音がする・息が苦しい・胸が痛いなどの症状がある場合は、救急車を呼ぶかすぐに病院を受診しましょう。