嘔吐・吐血

内容監修

石黒 剛

GO ISHIGURO

石黒 剛

GO ISHIGURO

医師

大学在学時から現在の病院中心の医療システムに疑問を持ち、 日常生活に医療を提供するシステム作りをミッションに掲げる。 2019年、訪問診療専門の「いしぐろ在宅診療所」を兄と二人で開業。 クリニックTENでは、働く世代に焦点を当て、生活に溶け込む医療機関の実現を目指す。

嘔吐・吐血とはどのような症状か

 嘔吐とは、胃の中のものが逆流して、食道や口を通り、身体の外に吐き出される現象のことです。吐血とは、嘔吐したものの中に血液が混ざっている状態を指します。ただし、痰に血が混ざっていて赤い場合は「喀血(かっけつ)」といい区別します。

 嘔吐の原因としては胃腸の不調が多いのですが、実はそれ以外の一見関係のないような場所が原因で起こる場合もあります。

嘔吐・吐血あるときに心がけること

 嘔吐した場合、まずは口の中をゆすいで綺麗にして、しばらく楽になるまで横になりましょう。落ち着くまでは水分も取らないほうが良いです。落ち着いて水分を取れそうであれば、少しずつ摂取するようにしましょう。栄養をとろうと無理して食べるのは禁物です。なお、水分を取っても嘔吐してしまう場合や、水分も取れない状態が長く続いている場合などは、脱水症状になっている可能性があります。早めに病院を受診しましょう。

 吐血した場合は、基本的にすぐに病院を受診するか救急車を呼んだほうが良いでしょう。どこかで出血があるということなので、そのまま放置すると危険な場合が多いです。ただし、口の中が切れて血が出ていたり、飲み込んだ鼻血を吐いたりといった場合は吐血ではありません。その場合にはしばらく様子を見て、それでも落ち着かないのであれば医師に診察してもらいましょう。

嘔吐・吐血の原因として考えうる疾患

 嘔吐の原因として、最も考えやすいのは感染性胃腸炎です。原因としてはノロウイルスやロタウイルスなどがあります。特にノロウイルスに関しては流行することが多く、一度は名前を耳にしたことがあると思います。二枚貝などのリスクの高いものを食べたあとであったり、周りに似たような症状の人がいたりする場合は、この感染性胃腸炎の可能性が高まります。他には、胆石発作や虫垂炎(俗に言う盲腸)などで嘔吐の症状が出る場合も多いです。

 吐血の原因としては、マロリーワイス症候群(お酒を飲んだ後に嘔吐を繰り返すことで起こるのが典型的)や胃潰瘍などが多いです。出血が続くと危険なので、すぐに病院を受診しましょう。意識がもうろうとしていたり、大量に吐血したりといった場合、緊急度が高いと言えます。すぐに救急車を呼びましょう。

嘔吐・吐血を伴う、緊急度の高い疾患

 消化器系(食道や胃、腸など)以外の場所が原因の病気でも嘔吐が起こることがあります。例としては心筋梗塞やくも膜下出血、脳梗塞など、心臓や脳に関係している病気があげられます。

 胸の痛みもある場合は心筋梗塞の可能性が高まります。くも膜下出血や脳梗塞などの場合は、頭痛や意識がもうろうとする、ろれつが回らない、手や足を動かしにくい(麻痺の症状)といった症状もあることが多いとされています。

これらの病気は一刻を争う緊急度の非常に高い病気なので、すぐに救急車を呼びましょう。

まとめ

  • 嘔吐したものに血が混ざっている場合を吐血と呼びます。
  • 嘔吐した場合、まずは口の中を綺麗にして横になり休みましょう。
  • 心筋梗塞やくも膜下出血など、関係なさそうな病気でも嘔吐の症状が出ることがあるので、全身の状態や意識にも注意が必要です。いずれの場合も、迅速な救急要請が必要です。