突然ですがあなたは、抜け毛が増えたと感じたり、薄毛が気になった経験はありませんか?
もし心当たりがある場合、その症状は「AGA」(エージーエー)かもしれません。
AGAとはAndrogenetic Alopeciaの略語で、日本語では「男性型脱毛症」と呼ばれています。いわゆる男性の薄毛のことですが、AGAという言葉も耳にした事がある人が多いのではないでしょうか。
日本人男性の場合、20代でも約10%の人にはAGAの症状があるといわれており、それ以降も30代で20%、40代で30%、50代以降では40数%以上と、AGAである男性の割合は増加していきます。
参照:板見 智:日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査,日本医事新報,2004; 4209: 27-29.
つまり日本人男性のうち約半分の方が、いつかはAGAを経験することになるわけです。
そこでこの記事では、
この記事で判ること
- そもそもなぜAGAになるのか?
- 毛根のセルフチェック方法
- AGAに対して自宅でできるケア方法
- 病院で受けることのできる治療方法
などに関して解説します。
目次
AGAになる理由は?
まずはAGAの原因に関してお話しします。
ほとんどの方は経験的にご存知だと思いますが、男性の中にも薄毛になる人とならない人がいます。
ではその違いとは一体なんでしょうか?
この項ではAGAの病態を含めて、AGAの原因を解説していきます。
薄毛の主な原因は男性ホルモンと遺伝
AGAの主な原因は「男性ホルモン」と「遺伝」です。
AGAが進行する流れは以下の通りです。
主な原因
- テストステロンと呼ばれる男性ホルモンが血液によって頭皮の毛根付近に運ばれる。
- テストステロンは5-α還元酵素によって、より強い男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)に変換される。
- DHTが毛根にある男性ホルモン受容体に結合する。
- 脱毛を促進する物質であるTGF-βが増加する。
- 毛髪の成長が妨げられ、薄毛が進行する。
このように「男性ホルモン」の働きをきっかけとして、貧弱で短い毛の割合が増え、徐々に薄毛が進行していくのがAGAの特徴です。
男性ホルモンを変化させる5-α還元酵素はおでこの生え際や頭頂部に多く存在するため、その部分が薄くなりやすいことも特徴のひとつといわれています。
そしてさらに、5-α還元酵素の活性度や男性ホルモン受容体の感受性には個人差があります。この個人差が「遺伝」によって決まる部分であり、AGAの発症に関わる遺伝子はすでにいくつも特定されています。
参照:Li R, Brockschmidt FF, Kiefer AK, et al: Six novel susceptibility Loci for early-onset androgenetic alopecia and their unexpected association with common diseases, PLoS Genet, 2012; 8: e1002746.
以上のことから、AGAは「男性ホルモン」と「遺伝」によって引き起こされる病気といわれています。
生活習慣の乱れはAGAの原因になる?
「生活習慣の乱れも髪の毛に悪い影響を与える」という話は聞いたことがあるでしょうか?
感覚的に、そのように思い込んでいる方も少なくないと思います。
ただ実際には、生活習慣の乱れとAGAの関係性についてはまだ結論が出ていません。
例えば、
- AGAの発症には高血圧・メタボリックシンドローム・喫煙などが関連する(参照1)
- 野菜・果物・赤身肉の不健康な摂取や喫煙はAGA早期発症リスクとなる(参照2)
などの報告があり、これらは、生活習慣とAGAは関係があるとする意見です。
参照1: Indian J Dermatol. 2019;64(1):19–22.
参照2:https://www.minervamedica.it/en/journals/Ital-J-Dermatol-Venereol/article.php?cod=R23Y9999N00A21042906
しかしその反面で、
- 肥満・高血圧・喫煙とAGAとの間に有意な関連を認めなかった(参照3)
- 食習慣・身体活動・職業・余暇の時間に関して、AGA患者とAGAではない人の間ではライフスタイルに有意な差は認められなかった(参照4)
- 運動習慣とAGAには相関関係がなかった(参照5)
など、先程の意見と対立している論文も発表されています。
参照3:Clin Cosmet Investig Dermatol. 2020; 13: 137–143.
参照4:Int J Trichology. 2010 Jul-Dec; 2(2): 81–85.
参照5:Annals of Dermatology 2017; 29(4): 513-516.
このように生活習慣とAGAとの関連についてはまだ議論が別れるところです。
抜け毛の毛根が〇〇な場合はAGAに要注意!
では実際に、どんな時にAGAに気をつければ良いのでしょうか。
髪の毛は通常でも1日に50~100本抜けるといわれています。
しかし、以前よりも抜け毛が増えたと感じる場合はAGAの初期症状かもしれません。
一度、以下の項目に関してセルフチェックをしてみましょう。
毛根に膨らみがない
まずはご自身の抜け毛を観察します。
最初にチェックするのはズバリ「毛根」です。毛根とはその名の通り毛の根本であり、抜ける前は皮膚に埋まっている部分です。健康な毛の場合、毛根は毛先や毛の幹よりも膨らんでいます。
しかしAGAによって抜けた毛の場合は毛根の膨らみが少ない、もしくは全く膨らみがありません。目で見るよりも指先で毛をつまんでみるとわかりやすいと思います。
簡単にチェックできますので、一度抜けた毛を触ってみましょう。
細くて弱々しい毛が抜ける
「髪の毛のコシがなくなる」と表現されることもあります。
AGAでは太く長く育つ毛髪の割合が減少します。
育ちの悪い毛は正常な毛と比較すると細くて弱々しく、ちぢれた状態になって抜けることもあります。
そういった抜け毛が増えている場合は、AGAが進行している可能性が高いです。
頭頂部や生え際が薄くなった
特にAGAの症状が出やすいとされるのは、頭頂部(つむじ周辺)やおでこの生え際です。
これは、AGAの発症に関わる5-α還元酵素がこの2箇所に多く存在するためです。
側頭部や後頭部の毛髪には変化がないのに、前頭部や頭頂部の毛が薄くなってきた場合はAGAによる脱毛かもしれません。
自宅でできるケア方法は?
セルフチェックでAGAかもしれないと思った場合、どのようにしたら良いでしょうか?
一番有効なのはもちろん、病院を受診して治療を受けることです。
しかしなるべく費用を抑えて治療したい方や、恥ずかしくで受診しにくい方もいらっしゃるかもしれません。そんな場合はまず以下のケアを自宅で行なってみると良いと思います。
※あくまで自宅でできるケア方法であり、治療効果を保証するものではありません。
生活習慣を見直す
先ほど、生活習慣の乱れとAGA発症には関連性が証明されていないとお伝えしました。
しかし逆に、関連がないと証明されたわけでもありません。
各国の論文の中には、ポジティブに受け取れるものも散見されます。
例えばAGAと生活習慣に関する論文で、こんな報告があります。
・AGA男性患者の頭皮の細胞では早期の老化が起きるが、その主な原因は酸化ストレスである。酸化ストレスとは活性酸素が細胞内に徐々に蓄積され、細胞の機能が失われていくことである。
参照:Postepy Dermatol Alergol. 2020 Feb; 37(1): 119–120.
活性酸素は食生活の乱れやストレスによって体内で増加する物質と言われています。
つまり生活習慣の乱れが老化を促進し、結果的にAGAにつながっている可能性があると考えることもできます。
具体的には
- 油っぽい食事を減らす
- 定期的に適度な運動を行う
- 睡眠時間を確保する
など、規則正しい生活を送ることがAGAに対するケアになる可能性があります。
頭皮のマッサージをする
頭皮のマッサージもAGAの改善に有効な可能性があります。
ある研究ではこう述べています。
・1日2回、各20分間のマッサージを続けた場合、AGAが改善する傾向が認められた。
参照:Barazesh Dermatology and Therapy volume 9, pages167–178
マッサージは自分でも簡単に行えるので、比較的取り組みやすい方法だと思います。時間を取れる方は試してみてはいかがでしょうか。
市販の薬を使う
薬で治療したいけれども病院を受診するのに抵抗があるという方は、市販の治療薬を試してみてもいいかもしれません。
実は日本皮膚科学会のAGA診療ガイドラインでも、外用薬の中で最も高い効果が期待されているのは処方薬ではなく市販薬であると発表しています。
特に「ミノキシジル」という成分が入っている外用薬はガイドラインでも強くオススメされています。購入の際は、ミノキシジルの濃度が異なるため、男性用と女性用があるのでお気をつけください。
病院でできるAGA治療にはどんな方法があるの?
セルフケア方法もあるとはいえ、一番有効な治療といわれているのはやはり病院での治療です。
ここからは、病院におけるAGA治療の流れを簡単にご紹介していきます。
本格的にAGA治療を受ける場合は、まずAGA治療に力を入れて取り組んでいる専門のクリニックや病院を探して受診しましょう。
そこでは医師がAGAかどうかを診断し、その人にあった治療計画を立ててくれます。
具体的な方針は医療機関によって異なりますが、まずは内服薬や外用薬で治療をはじめ、その後は病状に応じて数ヶ月おきに治療方針を再度検討する流れが一般的です。
その他にも様々な治療方法がありますが、代表的なものをご紹介します。
内服薬
特によく用いられる治療薬はプロペシア(フィナステリド®️)やザガーロ®️(デュタステリド)などの内服薬です。
どちらもAGAの原因である男性ホルモンの働きを抑えることで抜け毛を抑制するため、とてもよく効きます。
日本皮膚科学会もその有効性の高さを認めており、AGAの診療ガイドラインにおいて、最も高い評価を得ている治療方法です。
ただし内服を中断したらAGAは再度進行します。薬を飲み続けなければならないのがやや難点です。
外用薬
AGA治療に用いられる外用薬は、頭皮の血流改善・毛髪成長因子産生促進・毛髪の成長期延長などの効果がうたわれています。
内服薬よりも若干治療効果が劣るため、内服薬の補助的な立ち位置で使われたり、初期のAGAに対する治療でよく用いられます。
AGAに特化した病院であれば医薬品以外にも市販薬や院内で配合した薬剤など、様々な外用薬が選択できます。
外用薬による治療は他の治療法よりも安いことが多い点がメリットです。
光線療法
LEDライトや低い出力のレーザー光線を頭皮に当てる治療方法です。ヘルメット型の器具をかぶり、毎日光線を照射します。
この方法もAGAの診療ガイドラインにおいてそれなりに高い評価を受けています。
器具の購入には医師の診断が必要になりますので、ご希望の場合には専門の病院でご相談ください。
植毛
その名の通り毛を植える治療です。自らの後頭部などの健康な毛を、薄毛の部分に移植します。
非常に専門性が高いためこの治療を受けられる病院は限られており、費用も他の方法より高くかかるのが一般的です。
AGA治療の注意点
基本的にAGAに対する治療は保険適応外であり、費用は病院ごとに異なります。(円形脱毛症の治療は、保険適応となる場合もあるので確認しましょう)
また今回ご紹介した以外にもサプリメントや育毛シャンプーなど、様々な治療方法が実践されています。希望する治療方法を行なっているかどうかなどの詳細は、各医療機関のホームページ等にてご確認ください。
抜け毛が気になったら、なるべく早めに医療機関を受診しましょう!
ここまでAGAの原因・セルフチェック・セルフケア・病院での治療などについて解説してきました。
最後にお伝えしたいのは「AGAが気になる方は早めに対策した方がいい」ということです。
現代におけるAGAの治療では、すでに進行してしまったAGAを完治させるのはなかなか難しいのが現実です。
しかし幸いなことに、医療技術の進歩によってAGAの進行を薬の力で抑えることができるようになってきました。
AGAの症状があっても、早いうちならまだ間に合います。
少しでも気になる方は、なるべく早めに医療機関を受診しましょう!
AGAクリニック選びのポイント
クリニック選びのポイント
- 医師や受付スタッフの対応が親身
- 疑問に感じたことにも答えてくれる
- 必要ない治療を勧めてこない
- 副作用についての説明がある
AGA治療の基礎知識
AGA治療の効果が出始めるまでの期間
治療の効果を感じられるのは、3~6ヶ月かかります。3ヶ月で確実に効果が出る保証はありません。約1年間の継続が求められます。
AGAの主な治療方法は以下の通りです。
治療法 | 概要 |
内服薬 | プロペシアなどで脱毛シグナルを弱める |
外用薬 | ミノキシジルなどを使い。発毛を促進させる |
自毛植毛 | 後頭部の髪の毛を頭皮ごと移植する |
AGA治療では人によっては副作用が起こる可能性があります。
副作用を感じる患者は全体の0.1%〜0.2%と低く珍しいケースです。
医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
【起こり得る7つの副作用】 |
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AGA治療にかかる費用
予防(月額の最費用平均) | 4,800円(税込) |
発毛(月額の最低費用平均) | 33,000円(税込) |
※20クリニックから6ヶ月にかかる費用を月額に割り戻し計算しています。
※ご自身の症状によって費用は変動します。