多汗

内容監修

石黒 剛

GO ISHIGURO

石黒 剛

GO ISHIGURO

医師

大学在学時から現在の病院中心の医療システムに疑問を持ち、 日常生活に医療を提供するシステム作りをミッションに掲げる。 2019年、訪問診療専門の「いしぐろ在宅診療所」を兄と二人で開業。 クリニックTENでは、働く世代に焦点を当て、生活に溶け込む医療機関の実現を目指す。

多汗とはどのような症状か

 汗は体温を調節するために身体から出るものですが、必要以上に汗をかいてしまい、日常生活に支障が出るような症状を多汗症といいます。

 汗っかきと多汗症は別物です。多汗症では、原因不明の大量の汗が長期間出ている、滴り落ちるくらいの汗が出る、タオルを常に持ち歩いて拭き続けないと生活できない、常に手のひらや脇が湿っている、などの状態がみられます。緊張した時に手のひらに汗をかいてしまう、夏の暑い季節に汗をかきやすいなど、あくまで一時的なものであれば多汗症ではない可能性が高いとされています。

 多汗症には、全身の汗が増加する「全身性多汗症」と身体の一部(例えば手のひらや脇など)の汗が増加する「局所多汗症」の2種類があります。どちらも原因が分からない原発性(げんぱつせい)の場合が比較的多いです。原因が明確に分かる場合、全身性多汗症は感染症やホルモンなどの異常、神経の病気など、局所多汗症は外傷や神経が障害されることなどで起こることがあります。

多汗の原因として考えうる疾患

 多汗の原因として最も考えられるのは、上で述べた多汗症です。これは何か別の病気の結果生じるものではなく、原発性です。

 原発性の多汗症以外で、多汗の原因となるものとしては、感染症やホルモンなどの異常、神経の病気などがあります。

 緊張やストレスは発汗につながりやすいので、できるだけ強い緊張やストレスを避けるようにしましょう。また、体温調節がしやすいように服装にも注意してください。汗をかいた場合はなるべく清潔を保てるよう、ふき取るなどしてください。

多汗の治療法・対処法

 原発性の多汗症では、塗り薬や飲み薬のほか、ボトックス注射、イオン導入、手術などの治療があります。これらの治療には、それぞれ副作用もあり一長一短になっています。例えば、手術では手のひらの汗を出す神経を切除して手のひらの汗を止めますが、その代わりに別の場所から汗が出やすくなることが多くなっています。患者さんごとに適切な治療は異なるので、医師と相談の上で決定していきましょう。

 他の病気が原因で起こる多汗症については、まずは原因となっている病気の治療を行います。

 「ただの汗っかきだと思っていたら、実は多汗症だった。」「最近汗が出やすくなったと思っていたら、ホルモンの異常だった。」ということもあるので、汗で悩みがあれば一度病院を受診して医師に相談してみましょう。

まとめ

  • 多汗とは、必要以上に汗をかき、日常生活に支障が出る状態のことです。
  • 多汗症は原因の分からない原発性も多い疾患です。
  • 多汗症の治療は様々なものがあり、一長一短なので自分にあった治療法を医師と相談して決めることが大切です。
  • 多汗症の裏に別の病気が隠れていることもあるので、汗で悩みがあれば一度病院を受診しましょう。