「ピルを飲んでいたら中出ししても大丈夫」
そういう話を聞いたり、そう思い込んでいる人はいませんか?
確かにピルは高い避妊効果を示しますが、過信していると予期せぬ妊娠に繋がる可能性があります。
「絶対妊娠したくないんだけど、ピル飲むだけじゃだめなの?」また「ピル服用中に中出ししてしまった場合はどうしたらいいの?」
この記事では、ピル服用による避妊効果におけるこういった疑問に、基本からしっかりお答えしていきます。
目次
中出ししてしまった場合はアフターピル
低用量ピルを服用している状態で中出しを行なってしまった場合に、妊娠の可能性をさらに避けるためには「アフターピルの服用」という方法があります。
アフターピルとは
アフターピルは「性交後の緊急避妊」の目的に限って使用されるピルです。
少し前までは中用量ピルを使用したヤッペ法という方法が主流でしたが、吐き気などの副作用が強く出やすく、妊娠阻止率も57%と、それほど高くありませんでした。
そこで、現在は副作用が少なく、約90%と高い妊娠阻止率が期待できるアフターピルを用いた方法が主流となっています。
アフターピルを用いた避妊法にはレボノルゲステル法とウリプリスタール法と呼ばれる2種類があります。
レボノルゲステル法は「ノルレボ錠」という薬を用いた方法で、日本で初めて承認されたアフターピルです。
ウリプリスタール法は「エラ」または「エラワン」と呼ばれる薬を用いた方法で、日本ではまだ認可されてはいませんが、海外ではすでに幅広い国で使用されており、クリニックによっては処方してもらうことが可能です。
注意)妊娠阻止率:排卵日付近に性交渉を行なった際に、妊娠しないようにできる確率
避妊率:時期に関係なく、性交渉を行なった結果として妊娠しなかった割合
アフターピルの服用方法・効果
性交渉を行なった後、1回1錠を72時間以内に服用します。
この時、服用するまでの時間が早ければ早いほど、避妊が成功する確率は高くなります。
レボノルゲステル法では72時間以内の服用によって、排卵日付近で性交渉を行なった場合でも、約90%の確率で妊娠を阻止することができると言われています。
しかし、ウリプリスタール法であれば120時間以内の服用でも効果があり、72時間以内の服用で約97.9%、120時間以内でも約85%という確率で妊娠を避けられるという報告があります。
アフターピルの副作用
アフターピルによる副作用として、代表的なものに不正出血、吐き気、眠気、お腹の痛み、頭痛などが挙げられます。
いずれも長期間は続かず、服用後24時間以内に治るものがほとんどです。
また、副作用ではありませんが、ホルモンバランスが多少乱れることで生理予定日がずれるという特徴が挙げられます。
人によりますが、1週間前後ずれる可能性があります。
アフターピルの処方が可能なオンラインクリニックの選び方
アフターピルを処方してもらえるクリニックはいくつかあります。その中から、何を基準に選べばいいのか3つの項目に分けて解説します。
- 発送が速いか
- 取り扱うピルの種類が豊富か
- すぐに診療してもらえるか
クリニックを選ぶ際の参考にしてみてください。
1.発送が速いか
アフターピルの服用は、なるべく早いほうが高い効果を発揮します。オンラインクリニックを選ぶときは、発送の早さを重視しましょう。
中には、当日中に配送してくれるクリニックもあります。どうしても到着に時間がかかりそうなら、120時間以内なら効果を発揮する「エラワン」を取り扱うクリニックを選ぶのが良いでしょう。
2.取り扱うピルの種類が豊富か
アフターピルには、主に3つの種類があります。
- ノルレボ:72時間以内に服用。吐き気が少なく多くのクリニックが扱っている
- ヤッペ法:72時間以内に2錠、その後12時間以内に1錠服用。吐き気が出ることがある
- エラワン:120時間以内に服用。効果が高いが日本では未認可
たとえば、クリニックへの受診やアフターピルの到着時間が72時間を過ぎている場合には、エラワンを取り扱っているクリニックだと安心です。
副作用などもあるため、ピルの種類が豊富なクリニックのほうがあなたに合ったものを処方してもらえます。
3.すぐに診療してもらえるか
オンラインクリニックを選ぶときは、診療時間もチェックしたいポイントです。夜間に対応していたり、土日や祝日も診察してもらえたりするクリニックを選ぶのが良いでしょう。
特に、対面での診療も行っているクリニックの場合、休日や夜間には対応していないことがあります。いつでも相談できるクリニックを知っていると、いざというときに安心です。
ピルを飲んでいても避妊するべき
結論からお伝えすると、低用量ピルを服用していたとしても、中出しにより妊娠する可能性はゼロではありません。
ピルの避妊率は相当高く、99.7%の確率で避妊できると言われていますので、妊娠の可能性はほぼ無くなると言っていいかもしれません。
ただし、裏を返せば、1000人中3人は妊娠する可能性があります。
そして、この99.7%という数字は「ピルを正しく服用できている状態での割合」です。
詳しくご説明させていただきますね。
ピルによる避妊率
ピル服用による避妊率は99.7%とお伝えしました。
しかし、これは「毎日決まった時間に、飲み忘れなく使用した場合」の確率です。
ピルを使用してはいたけれど、飲み忘れなどにより正しく飲めていなかった場合は、妊娠する確率が9%まで上がることが報告されています。(下表)
そのため、服用方法を守らずに、自己判断で適当に飲んでいたりすると、妊娠する可能性はグッと上がってしまいます。
避妊法 | 避妊失敗率 | |
理想的な使用注1) | 一般的な使用注2) | |
避妊しない | 85% | 85% |
コンドーム | 2% | 18% |
リズム法 | 0.5〜4% | 24% |
膣外射精法 | 4% | 22% |
ピル | 0.3% | 9% |
IUS | 0.2% | 0.2% |
IUD | 0.6% | 0.8% |
IUS:子宮内避妊システム(ミレーナ)、IUD:子宮内避妊具(避妊リング)
注1)理想的な使用を想定した避妊失敗率:選んだ避妊法を正しく続けて使用しているにもかかわらず妊娠をしてしまう確率
注2)一般的な使用を想定した避妊失敗率:選んだ避妊法を使用しているにもかかわらず妊娠してしまう確率
参考:Contraception. Author manuscript; available in PMC 2013 Apr 29.
Published in final edited form as:
Contraception. 2011 May; 83(5): 397–404.
Contraceptive failure in the United States、James Trussell, PhD
外出しならOK?
ピルを服用していても中出しで妊娠してしまうのであれば、外出しすれば問題ないと思う方もいるかもしれませんね。
実際、日本においてコンドームの次に避妊法として行われているのが、膣外射精法です。
しかし、膣外射精法は誤った認識で行なっている人も多く、一般的な使用では22%もの確率で妊娠してしまうとデータにもある通り、完璧な避妊法であるとは到底言えません。
俗にいう我慢汁(カウパー液)には、射精前の精液が含まれているため、射精は行っていない状態ではありますが、精子が子宮内に入り、妊娠する可能性は十分にあります。
そのため、避妊を確実に行うためには、ピルを飲んでいる状態であるとはいえ、中出しはもちろんのこと、外出しに関しても避けた方が良いと言えるでしょう。
その他の避妊法の避妊率は?
日本では妊娠を希望しない女性の避妊方法としては、コンドームが最もメジャーで、妊娠を希望しない女性のうち、82%が避妊法として選択していると言われています。
しかしながら、コンドームでは正しく使用できていても2%の確率で妊娠する可能性があるため、こちらも残念ながら確実な避妊法とは言えません。
また、生理日などから計算して排卵日を予測するリズム法についても、避妊失敗率はやや高めです。
IUSやIDと呼ばれる方法は高い避妊率が期待できますが、子宮内に器具を挿入するため、ハードルが高く感じられる人もいるのではないでしょうか。
しかしながら、どの方法であっても、妊娠の可能性をゼロにすることは難しく、絶対に妊娠を避ける方法というのはありません。
そのため、避妊法を複数併用するのが、避妊にあたって最も効果的であると言えるでしょう。
そもそも低用量ピルとは?
低用量ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンが配合されている錠剤で、含まれる卵胞ホルモンの量が中用量ピルと呼ばれるものに比べて少なくなっているため、低用量ピルと名前がついています。
一般的にピルというと、低用量ピルのことを指す場合が多く、国内で最もメジャーなピルと言っていいでしょう。
低用量ピルの効果
避妊をメインとして、ニキビ、PMSなどの改善、そして生理不順や生理過多といった生理の悩みについても効果を示します。
また、子宮内膜症や月経困難症といった病気の治療に用いられることも多く、幅広い用途で活躍するピルです。
主な服用方法
生理日をずらすなど特定の目的を除いて、基本的に21日間毎日同じ時刻に服用を続け、その後7日間は薬をお休みします。
この28日を1クールとし、1つのシートに1クール分の薬がセットされていますが、この時、1シートに有効成分が含まれている21錠だけ薬がセットされている製品と、プラセボという有効成分の入っていない薬が7錠一緒にセットされている28錠入りの製品が存在します。
プラセボを用いることで、毎日の服用習慣を乱さず、ピルの飲み忘れを防ぐことができるでしょう。
低用量ピルで避妊する場合の注意点
低用量ピルの使用は正しく使用すれば高い避妊率が期待される方法です。
低用量ピル服用における注意点をいくつかお伝えさせていただきます。
飲み忘れ
低用量ピルによる避妊失敗を避けるために、最も気をつけたいのが「飲み忘れ」です。
1回分を飲み忘れた場合は、気づいた時点でなるべく早く服用し、次の分から再び通常通りに服用すれば、避妊効果にはほとんど影響はありません。
ただし、連続して2回分を飲み忘れてしまった場合は、避妊効果が薄れる可能性が高くなります。
気づいた時点で1錠服用し、その後はいつもの予定通りに服用しますが、その後7日続けて服用できるまでは、コンドームを使用するか、性交渉を避ける必要があります。
また、飲み忘れたタイミングによっても、避妊効果に対する影響が変わってくるため注意が必要です。
休薬期間の前後で服用を忘れてしまうと、排卵が起こる可能性が高くなってしまうため、より慎重に飲み忘れないよう気を配る必要があります。
休薬期間の前後1週間は、連続していなくても2回以上飲み忘れがあると、排卵の可能性があるため、別の避妊法を取り入れるか、性交渉を行わないようにしましょう。
副作用
低用量ピルは避妊法の中でも、高い避妊率を示してはいますが、服用により副作用が起こる可能性もあります。
代表的な副作用には、吐き気、眠気、むくみ、不正出血、頭痛などが挙げられるでしょう。
また、頻度としては大変低いですが、特に気をつけねばならない副作用として「血栓症」があります。
血栓症は血液の一部が固まって血の塊となり、血管が詰まってしまう病気で、症状を放置していると、最悪の場合は命に関わることもあります。
初期の段階で治療すれば問題はありませんので、激しい腹痛や頭痛、また息苦しさ、ふくらはぎの痛み、視力や目の見え方の変化などがあれば、必ず処方医に相談するようにしましょう。
まとめ
ピル服用中に中出しをした際に妊娠する確率、また中出しをしてしまった場合の対応について、その他の避妊法やピルの基本的な知識も交えてご紹介させていただきました。
ピルは、飲み忘れなく、しっかり飲めていれば高い避妊率が期待できますが、それであっても100%妊娠を避けることはできないため、可能な限り中出しは避けて、他の避妊法も同時に取り入れることをおすすめします。
また、中出しをしてしまった場合には、アフターピルを用いるという方法もありますので、過度に慌てないで、取り扱いのあるクリニックに相談してみましょう。