テストステロンを高めるサプリは存在する?-医師が徹底解説!

テストステロンレベルを高めるサプリ: テストステロンブースター

世の中には、主に男性をターゲットにした、テストステロンのレベルを高めることを謳ったサプリメントがあります。こういったものは一般にテストステロンブースターと呼ばれています。テストステロンを高め、男性らしさや大性機能をアップさせることを期待して飲まれている方も多いのではないでしょうか。今回は、巷で見かけるテストステロン増強サプリの効果について、果たして本当にテストステロンや男性ホルモンを直接増加させるのか、論文や研究によって示されたエビデンスをもとにご説明します。

テストステロンを上げる(高める)と謳われるサプリ

D-アスパラギン酸

D-アスパラギン酸は、テストステロンを作る細胞を刺激するといわれている

D-アスパラギン酸は主に卵胞刺激ホルモン（FSH）と黄体形成ホルモン（LH）のレベルを上げる作用があります。LHは、テストステロンを産生する精巣を刺激するホルモンです。LHを増加させることによって精巣のライディッヒ細胞という細胞を刺激してテストステロンを多く生成すると考えられています。加えて、精子の質と生成にも効果があるとする報告もされており、D-アスパラギン酸を精子を作る能力に問題のある男性に投与したところ、精子数が2倍になったと報告する研究があります。

D-アスパラギン酸の効果には、ネガティブなものも存在

D-アスパラギン酸はテストステロン値もレジスタンストレーニングの成果も上げない、という結論が導かれた研究も、複数報告されています。

さらに、2020年には、毎日3グラムのD-アスパラギン酸を摂取しても人間のテストステロンレベルには影響を与えないばかりか、逆に毎日6グラムを摂取するとそのレベルを下げる可能性について指摘する論文が発表されました。

以上より、D-アスパラギン酸がテストステロンの低下や性機能の低下に役立つかどうかについての研究は、テストステロンに関与するいくつかのホルモンを刺激することが示唆されているものの、学術的な結論は出ていません。一般に、こういった「結果のよくわからない、はっきりしない」というものについては、医師がおすすめするということはありません。ことテストステロンを増やすという目的でサプリメントを接種する場合、D-アスパラギン酸は強力な味方というわけではなさそうです。

ビタミンD

ビタミンDは、いろいろな機能を持つ生きるために必要なホルモン

ビタミンDは脂溶性の(油に溶ける)ビタミンで、合成するためには日光を浴びる必要があるホルモンです。日光を浴びる機会が少ない人は、ビタミンDの濃度が低い可能性があります。たとえば、夏の太陽の下で過ごす時間を増やすと、ビタミンDとテストステロンのレベルが上昇するという報告があります。ビタミンDは骨を強くしたり、ステロイドホルモンとして機能し、男性の性機能には欠かせないと言われている物質です。

ビタミンDの接種は、テストステロンを増加させる

ビタミンDの体内貯蔵量を増やせば、テストステロンが増加し、精子の質など、その他の関連する健康指標も改善される可能性があります。

別の研究では、65人の男性を2つのグループに分け、一方のグループは毎日3,300IUのビタミンDを摂取しました。1年間の観察期間で、サプリメント群のビタミンDレベルは2倍になり、テストステロンレベルは約20％上昇しました。

ビタミンDを増やすには、サプリ・食事に加えて日光浴も大切

ビタミンDをより多く摂取するには、日光浴を増やしましょう。また、約3,000IUのビタミンD3を毎日摂取したり、ビタミンDを多く含む食品を食べたりするのもよいでしょう。

但し、病院で処方されるビタミンDは活性型ビタミンDと言われ、過剰摂取すると副作用のリスクがありますので、注意が必要です。日常生活の食事やサプリで摂取するものは不活性型であり、過剰摂取に伴うリスクはあまりないでしょう。

トリビュラス・テレストリス（Tribulus Terrestris）

トリビュラス・テレストリスは性機能を高めると謳われるハーブ

トリビュラス テレストリスは、何世紀にもわたって伝統的医学で使用されてきたハーブで、テストステロン値や性機能への良い影響が謳われてきました。

しかし研究の結果、動物ではテストステロンレベルを上昇させることがわかりましたが、人間では同じ効果はないようです。しかし、男女ともに性機能（例：勃起機能）や性欲を高める可能性は示唆されています。

トリビュラスは、男性ホルモンの量を増やす目的としては力不足

現在のところ、トリビュラスは、性機能と性欲を高めるのに役立つかもしれませんが、テストステロンレベルを上げる効果はないと思われます。

フェヌグリーク

フェヌグリークも、人気のあるハーブ系サプリ

フェヌグリークが性機能や生活の質にどのような影響を与えるかを調べた研究では、25歳から52歳の健康な男性60人に、フェヌグリーク600mgあるいは偽薬の錠剤を6週間毎日与えたところ、フェヌグリークのサプリメントを摂取した群では、体力の向上が診られました。

さらに、2020年のレビューでは、フェヌグリークエキスがテストステロンレベルを高めることができると結論づけられています。

現在までの研究からは、フェヌグリークを摂取することで、テストステロン値が正常な男性と低い男性のテストステロンと性機能を高める効果があると言えるでしょう。

生姜

生姜は、ラットではテストステロンの上昇が示唆されている

生姜は、何世紀にもわたって代替医療の一翼を担ってきた一般的な家庭用スパイスです。

炎症を抑えたり、コレステロール値を下げたりと、様々な健康効果が期待されています。ネズミを使ったある研究では、テストステロンを増加させる可能性も示唆されています。

実際、いくつかのネズミを使った研究では、生姜がテストステロンのレベルや性機能にプラスの影響を与えることがわかっており、生姜が糖尿病のラットのテストステロンと黄体形成ホルモンを増加させることが示唆されています。

人での研究は多くありませんが、75人の不妊症の男性が生姜のサプリメントを毎日摂取した結果、3カ月後にはテストステロン値が17％上昇し、黄体形成ホルモンの値も約2倍になったという研究は報告されています。

また、同じ研究で、精子の健康状態を測定したところ、精子数が16％増加するなど、男性としての機能についていくつかの改善が見られました。

生姜が特に健康な男性におけるテストステロン値にどのような効果をもたらすかについては、さらなる研究が必要です。しかし、生姜を食べることは安全ですし、他にも多くの健康上の利点があるかもしれません。一般のサプリメントでも、肝臓の機能に障害をきたすことがあることはみられますが、相当の量を接種しない限り、食事での接取には問題ありません。

DHEA

デヒドロエピアンドロステロン（DHEA）は、主に副腎で生成されるホルモン

DHEAは、テストステロンとエストロゲンのレベルを管理する働きがあります。

DHEAサプリメントは、市場で最も人気のあるテストステロンブースターの1つで、多くの人が、テストステロンを高めるためにDHEAサプリメントを内服しています。

しかし、多くのサプリメントと同様に、結果はまちまちです。テストステロンを上昇させると報告された研究もありましたが、同様の量を使用した他の研究では、効果が見られませんでした。

なお、テストステロンレベルや運動能力に対するDHEAの影響は明らかではありませんが、プロスポーツではDHEAの使用は禁止されています。詳細はアンチドーピング協会の文書をご覧ください

他のサプリメントと同様に、DHEAやテストステロンのレベルが低い人には効果があるかもしれません。

亜鉛

亜鉛は、テストステロンが低い人に対しては効果的とされる

亜鉛は、体内の100以上の化学的プロセスに寄与する必須ミネラルです。

研究では、亜鉛と、テストステロンレベルを含む男性の性的健康との間に関連性があることがわかっています。亜鉛レベルが低いと、男性の性的健康と生殖能力に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されています。

ある研究では、テストステロンレベルが低く不妊症の男性は、硫酸亜鉛220mgを1日2回、1～4ヶ月間摂取することで効果が得られることが示唆されています。

亜鉛やテストステロンのレベルが低い人や、ストレスの多いトレーニングをしている人は、亜鉛を摂取すると効果的でしょう。亜鉛とテストステロンの関係性について詳しく説明した記事もあわせてお読みください

アシュワガンダ

アシュワガンダは、古代インドの医学で使用されているハーブ

アシュワガンダは主にアダプトゲン（ストレスへの抵抗性を高めるハーブ）として使用されており、体がストレスや不安に対処するのを助けます。

ある研究では、不妊症の男性を対象に、アシュワガンダの精子の質に対する効果を検証しました。1日5グラムを3カ月間摂取したところ、参加者はテストステロンレベルが10～22％上昇しました。さらに、14％の参加者のパートナーが妊娠したという結果も出ています。

別の研究では、アシュワガンダがテストステロンレベルを高めながら、運動パフォーマンス、体力、脂肪減少を増加させることが示唆されています。

現在までの研究によれば、アシュワガンダは、ストレスを感じている人のテストステロンレベルを上げるだけでなく、性機能や体組成を改善する可能性があります。

テストステロンは、男性の健康と体の構成の多くの面で重要であり、テストステロンを増加させることを期待した様々なサプリメントがありますが、それを使用をサポートする重要な研究結果があるものはごくわずかです。

これらのサプリメントの多くは、不妊症やテストステロン値が低い人にのみ顕著な効果があると考えられます。

健康で活動的な人に対する効果は、多くのサプリメントでそれを確認する十分な証拠はまだありません。また、これらのサプリメントの多くは、長期的な安全性が確立されていません。

以上より、特にストレスの多い生活を送っているわけではない健康な一般成人では、テストステロンブースターと呼ばれるサプリメントは、現時点では多くを期待しすぎない方が良いかもしれませんが、さらなる研究が進むことによって効果が実証される余地は残されており、身体に害が出ない範疇ならばサプリメントの摂取はしても良いでしょう。

結論：テストステロンをサプリで増やせるかは、個人差が大きい

様々なサプリメント、健康食品について多くのデータや研究をご紹介してきましたが、はっきりと男性ホルモン(テストステロン)の値を増やすことのできるサプリメントはいまのところありません。

また、競争の激しいアスリートやダイエット中の人は、制限やストレスの多いレジメンによってテストステロンが大幅に減少することがよくあり、サプリメントはこれらの人々にも有効かもしれません。

各サプリメントに関してのご質問があれば、お気軽に当院へ御相談ください。一方で、テストステロンを本当に増やしたい、確実に増やしたいと考えている方には、サプリではなくお薬をつかってのホルモン補充をおすすめしています。当院では、補充にあたっての事前検査や補充後の身体の変化に対するフォローアップをしっかりと行いますので、まずはご相談にお越しいただければと思います。

CLINICTEN メンズヘルス外来のご紹介

当院では、男性ホルモンの量を増やすことで、勃起不全だけでなく、性欲や、男性としての活力、集中力をアップさる治療を行っています。ご興味おありの方は、是非ご相談ください