この記事を書いた医師
安斉 基之
MOTOYUKI ANZAI
安斉 基之
MOTOYUKI ANZAI
医師 / 泌尿器科医専門医 / ボトックスビスタ認定医 / オンライン診療研修終了 / 緩和ケア研修終了
2015年 東邦大学医学部卒業 クリニックTENでは美容皮膚科、泌尿器科、内科、皮膚科など全般を担当。
性感染症(STD)は、決して特別な人だけがかかる病気ではありません。性的な接触があれば、誰でも感染する可能性がある、とても身近な病気です。
しかし、その多くは感染しても症状が現れにくいため、「自分は大丈夫」と思い込んでいる方が少なくありません。気づかないうちに病状が進行してしまったり、大切なパートナーにうつしてしまったりするケースも後を絶ちません。
この記事では、特に症状がない場合でも注意すべき性感染症について、そのリスクや検査の重要性を専門家の視点から解説します。将来の自分と大切な人を守るために、まずは正しい知識を身につけましょう。
最も注意が必要なのは「症状がない」ケース

性感染症について最も知っておいていただきたいのは、感染しても症状が出ない、あるいは非常に軽い症状しか現れない「無症状」のケースが非常に多いという事実です。
症状がないため、ご自身が感染していることに気づくことができません。そのため、知らず知らずのうちに治療が遅れ、病状が進行してしまうリスクがあります。
例えば、日本で最も多い性感染症であるクラミジア感染症は、女性の約80%、男性の約50%が無症状であると報告(※)されています。症状がないからといって、決して安心はできないのです。
※引用元:その他性感染症(クラミジア、淋病など)|大阪市(https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000085965.html)
あなたが気づかぬうちに、パートナーへ感染させてしまう危険性
ご自身に症状がなければ、感染の可能性を考える機会は少ないかもしれません。しかし、まさにその状態が、気づかないうちに感染を広げてしまう「サイレント・スプレッダー」となってしまう危険性をはらんでいます。
ご自身が感染源であることに気づかないまま、大切なパートナーを傷つけてしまうのは、とても悲しいことです。パートナーに症状が出て初めてご自身の感染が判明するケースも少なくありません。
パートナーの健康を守ることは、ご自身の責任でもあります。相手を思いやる誠実な行動として、少しでも心当たりがある場合は検査を受けることが非常に重要です。
また、一方が治療しても、もう一方が未治療のままだと、お互いに感染を繰り返す「ピンポン感染」に陥ってしまいます。感染の連鎖を断ち切るためには、パートナーと一緒に検査を受け、必要であれば同時に治療を行うことが重要です。
放置が招く、将来への深刻な影響
症状がないからといって性感染症を放置すると、将来の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。特に女性の場合は、不妊症に繋がるリスクがあるため、決して軽視できません。
感染が子宮頸管から子宮、卵管、そして骨盤内へと広がると、炎症(骨盤内炎症性疾患:PID)を引き起こします。この炎症が原因で卵管が詰まったり、周辺の組織とくっついてしまったり(癒着)、卵管そのものが硬くなって動きが悪くなったりします。その結果、精子や受精卵の通り道が塞がれ、不妊症や子宮外妊娠の原因となる場合があります。
さらに、妊娠中に感染していると、流産や早産のリスクが高まるだけでなく、産道を通る際に赤ちゃんに感染(母子感染)し、新生児結膜炎や肺炎などを引き起こす可能性もあります。将来の妊娠・出産を考える上でも、早期発見・早期治療がいかに重要か、お分かりいただけるかと思います。
症状がなくても注意すべき、代表的な性感染症

ここでは、特に症状が出にくく、注意が必要な代表的な性感染症を3つご紹介します。ご自身やパートナーに、思い当たる節がないか確認してみてください。
1.クラミジア感染症:女性の不妊に繋がる最大の原因
クラミジア・トラコマティスという細菌が原因で起こる、日本で最も報告数の多い性感染症です。感染から1〜3週間ほどの潜伏期間を経て症状が出ることがありますが、特に10代〜20代の若い世代に感染が広がっています。
無症状であることが大半ですが、症状が出る場合はおりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交時痛などがみられます。放置すると、前述の通り骨盤内炎症性疾患を引き起こし、卵管の癒着や閉塞を招いて不妊症の最大の原因となります。
また、オーラルセックスによって咽頭(のど)に感染することもあり、その場合もほとんどが無症状です。
2.淋菌感染症(淋病):のどにも感染し、強い薬剤耐性菌も
淋菌という細菌によって引き起こされる感染症です。クラミジアと同時に感染していることも少なくありません。
女性の場合はクラミジア同様に症状が出にくいことが多いですが、おりものが黄色っぽくなったり、量が増えたりすることがあります。放置すれば、もちろん不妊の原因にもなり得ます。男性の場合は、排尿時に強い痛みを感じたり、尿道から黄色い膿が出たりと、比較的症状が出やすいのが特徴です。
近年、抗生物質が効きにくい「薬剤耐性淋菌」が増加しており、治療が難しくなるケースも報告されています。のどにも感染し、咽頭炎の原因となりますが、無症状の場合も多いです。
3.梅毒:全身に影響を及ぼす、近年急増中の病気
梅毒トレポネーマという細菌による感染症で、近年、若年層を中心に感染者数が急増し、深刻な問題となっています。
梅毒は、感染後の時間の経過によって様々な症状が現れるのが特徴です。感染から約3週間後には、感染部位(性器、口唇部、肛門など)に痛みのないしこりやただれができますが、これは自然に消えてしまいます。
その後、数週間から数ヶ月経つと、治療をしなくても「バラ疹」と呼ばれる特徴的な赤い発疹が、手のひらや足の裏、体中に現れます。これもまた自然に消えてしまいますが、病原菌が体内からいなくなったわけではありません。
症状がないまま数年から数十年進行し、末期になると脳や心臓、血管に重大な合併症を引き起こす、非常に恐ろしい病気です。また、妊婦が感染すると胎盤を通じて胎児に感染し、死産や先天梅毒の原因となります。
性病が「治った」は自己判断できない

クリニックで処方された薬を飲み、症状がなくなったからといって、自己判断で「治った」と考えるのは非常に危険です。
症状が改善しても、体内に病原菌が残っている可能性があります。ここで治療を中断してしまうと、症状が再発したり、菌が薬の効かない「薬剤耐性菌」に変異してしまったりするリスクがあります。
性感染症の「治癒」は、医師の指示通りに薬を最後まで飲みきり、その後の再検査で病原菌がいないこと(陰性)を確認して、初めて判断されるものです。ご自身の判断で通院や服薬をやめないようにしてください。
感染機会から、どのくらいで検査できる?

「もしかして感染したかも…」と不安になった時、すぐにでも検査を受けたいと思うかもしれません。しかし、性感染症の検査には、感染していても陽性反応が出ない「ウィンドウピリオド」という期間が存在します。
これは、感染してから体内でウイルスの遺伝子や抗体などが、検査で検出できる量まで増えるのに一定の時間が必要だからです。早すぎると、感染していても「陰性」という誤った結果が出てしまいます。
一般的に検査が可能になるまでの期間の目安は以下の通りです。
- クラミジア、淋菌(おりもの・尿検査): 感染機会から24時間以上経過後
- 梅毒、HIV、肝炎ウイルス(血液検査): 感染機会から4週間以上経過後
ただし、これはあくまで目安です。ご不安な方は、まず一度クリニックにご相談ください。適切な検査のタイミングを医師がご説明します。
クリニックでは、どのような検査を行うの?

当院では、患者様のプライバシーに最大限配慮し、安心して検査を受けていただける環境を整えています。ご状況やご不安な点を丁寧にお伺いした上で、必要な検査をご提案しますので、「どの検査を受ければいいか分からない」という方もご安心ください。
採尿・うがいによる検査(クラミジア・淋菌など)
クラミジアや淋菌は、尿やうがい液から病原菌の遺伝子を検出することで検査が可能です。尿検査は痛みもなく、簡単に検体を採取できます。
また、オーラルセックスによる咽頭(のど)への感染も増えているため、必要に応じてうがい液による検査も行います。女性の場合、内診で腟や子宮の入口から直接おりものを採取する方法が最も精度が高いですが、内診に抵抗がある場合は尿検査も可能ですので、ご相談ください。
採血による検査(梅毒・HIV・B型肝炎など)
梅毒やHIV(エイズ)、B型肝炎、C型肝炎などの感染は、血液検査で調べます。腕から少量の血液を採取するだけで、複数の項目を同時にチェックすることが可能です。
これらの病気も、初期には症状が出ないことがほとんどです。感染の機会に心当たりがある方や、ご自身の状態を一度きちんと確認しておきたいという方は、一度の採血でまとめて検査を受けることをお勧めします。
治療は、早期であるほど治療の負担が軽く済む

どのような病気にも共通することですが、性感染症も早期に発見し、早期に治療を開始することが極めて重要です。早く治療を始めるほど、心身や費用にかかる負担が軽くて済みます。
例えばクラミジアや淋菌、梅毒などは、早期であれば抗生物質の内服薬で治療が完了することがほとんどです。しかし、治療が遅れて骨盤内まで炎症が広がってしまうと、点滴治療や入院が必要になるケースもあります。
症状がないからと放置している間に、病気は静かに進行しています。「あの時検査しておけばよかった」と後悔しないためにも、治療の選択肢が多く、負担も少ないうちに対処するためにも、早期検査を心がけましょう。
まとめ:手遅れになる前に。あなたと未来の家族のために、今すぐ検査を

性感染症は、症状がないまま進行し、不妊症や深刻な合併症など、あなたの将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、知らずに大切なパートナーを傷つけてしまう危険性もはらんでいます。
しかし、性感染症は決して特別な病気ではなく、誰にでも起こりうることです。そして、検査によって早期に発見し、正しく治療すれば、決して怖い病気ではありません。
この記事を読んで、少しでも不安に感じたり、心当たりがあったりする方は、どうか一人で悩まないでください。あなた自身と、未来の家族を守るために、勇気を出して一歩を踏み出し、検査を受けることを強くお勧めします。クリニックTENでは、あなたの不安に寄り添い、最適な検査と治療をご提案します。
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